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離婚基礎知識

離婚における自宅の諸問題

離婚に際して大きな問題となるのが不動産(土地家屋)の扱いです。
結婚後に購入した不動産とは、ほとんどの場合現在住んでいる自宅の事です。
当然、自宅は夫婦共有財産ですので、財産分与の対象となります。

自宅の価値と他の財産(預貯金や有価証券)の価値が同じくらいならば
どちらかが自宅、他方がその他の財産を取得すれば金銭的バランスが取れるので
財産分与としては簡単なのですが、通常は自宅の価値が最も大きいか
財産が自宅しかない場合がほとんどです。

不動産も財産分与の原則に従い1/2の割合で分けることになります。
よって自宅もこの原則に従い分けることになりますが、
物理的に半分に分けることは不可能ですし、離婚後の夫婦がそれぞれの持分に
従い自宅に同居し続けることも考えられません。

不動産登記上は、それぞれの持分で不動産を共有することも可能ですが
上記の問題の解決にはつながらず、固定資産税や相続の問題が
絡んで来ることが考えられるため、離婚後の不動産の共有は避けるべきです。

よって、自宅の関しては、自宅そのものを売却しその代金を分けるか、
どちらかが自宅を取得し、他方には財産分与割合に応じた金銭を支払うのが
一般的です。

自宅の財産分与を複雑にしている最大の問題は住宅ローンです。
多くの場合、自宅を購入する際に住宅ローンが組まれており
その支払い年月は長期に及びます。
そのため離婚の際にもローン支払い義務が残っていることがほとんどです。

このローンの支払い義務と自宅の保存、居住権などを
夫婦のどちらがどう取得するかで対立が生じることが多くあり、
決まった解決方法がないため、状況に応じながら
場合によっては裁判所の助けを借りながら解決していことになります。

 

自宅に住みつづける場合(ローン残額無し)

住宅ローンが無く、夫婦どちらかが自宅に住みつづける場合
注意すべき点はは自宅の現在の価格です。

通常、住宅ローンが無い状況とは、ローンが完済されている状況なので
自宅がそれなりの築年数と経ている可能性が高いはずです。
築年数が20年以上の家屋はほとんど無価値なので、自宅の価値は
土地代のみと考えられます。

そのため土地の価格が高騰している場合は別として、
自宅の価値は想像よりも低い事もあるので事前価格調査は欠かせません。

夫婦のどちらか一方が自宅に住み続ける場合は、自宅の価値の半分を
他方へ分与することになるのが原則です。
そのため自宅に住み続ける方は、ある程度の現金を用意しておく必要があります。

ただし、実際の協議離婚の場では
他方へ分与する自宅価格の半額分を、その他の財産や慰謝料と相殺する方法が
よく見られます。

例えば、自宅の価格2000万、その他の財産500万、慰謝料500万とすると
財産総額は2500万なのでその半分の1250万が財産分与となります。
よって自宅を取得する方は750万(2000万-1250万)を他方へ支払う必要がありますが、

他方から支払われる慰謝料500万と相殺し、250万を支払うか
慰謝料の支払いを求める代わりに、支払うべき750万を免除してもらう方法です。

自宅を出る方としては、250万の分与を諦める形になりますが
離婚協議が不調に終わることで裁判に発展し離婚問題が長期化することを回避できます。

 

自宅を売却する場合(住宅ローン無し)

住宅ローンの無い自宅を売却する場合は、その売却代金を折半すれば
財産分与は完了するので簡単です。

ただし、上述したように自宅の価値はほぼ土地代のみの場合が多く
通常は売却の際には、中古住宅付きの物件の売却は難しいため
更地にするための工事代金が差し引かれることが多いです。

そのため予想よりも売却代金が低くなる事もあるので
実際にいくらくらいで売れるのか、本当に売れる物件なのかを
事前に複数の不動産屋に相談することが良いでしょう。

 

住宅ローンがある場合の諸問題

離婚の際に住宅ローンの支払いが残っていることが非常の多く見られます。
この住宅ローン付きの自宅の扱いは非常に難しく正解というものがありません。
実際、離婚裁判においてもローンについてもめることが多く、裁判所も確定的な見解を
出すことは避けている傾向にあります。

住宅ローンの問題で難しいのは、夫婦だけでなく銀行が関係しているため
夫婦で勝手にローンの支払い内容について変更できないからです。

通常ローンを組む際に、銀行は世帯収入を基準に審査を行い
それをもとに毎月の返済額を決定しています。
そしてもしものために自宅の土地・建物に抵当権を設定して
夫婦を連帯保証人もしくは連帯債務者としています。

そのため離婚したからといって返済額を容易に減額変更することは出来ず
ローンの支払い義務者を勝手に変更したり、抵当権を外すこともできません。
またローンの返済が一定期間以上滞れば、銀行により自宅は差押えらえ
競売にかけられる可能性もあります。

よってローン付の自宅が財産分与の対象になる場合は
自宅の現在の価値、ローンの残額と毎月の返済額をよく検討する必要があります。

ローン付の自宅の財産分与はローンの残額により下記のように大別されます。

自宅の価値≧住宅ローン残額 (アンダーローンの場合)
自宅の価値≦住宅ローン残額 (オーバーローンの場合)

問題が複雑化するのはオーバーローンの場合です。
裁判などではオーバーローンの場合、自宅の財産価値はゼロとされ
財産分与の対象とみなされないため、離婚の際に所有権の帰属が問題となります。

 

自宅を売却する場合(アンダーローン)

アンダーローンでの自宅売却は、住宅ローンがない場合の
売却とほぼ同じになります。

自宅の売却代金からローンの残額を引いたものが財産分与の
対象となり、財産分与の原則に従いその金額を折半もしくは
お互いの合意による割合でそれぞれ取得します。

自宅に住み続けることはできませんが、夫婦ともにローンの
返済義務から解放されることになるので精神的、金銭的負担が小さく
裁判等を経ないため時間もかかりません。

ただし、建物の築年数によっては更地で売却する必要があるため
そのための費用を売却額から引くと全体的にはほとんど金銭が
残らない場合もあるので、事前の価格調査は必須です。

 

自宅に住み続ける場合(アンダーローン)

離婚後も夫婦の一方が自宅に住み続ける場合
自宅の評価額からローンの残額を引いた金額が財産分与の対象となるため
住み続ける方がもう一方にその金額の1/2を支払う必要があります。

例えば、自宅2000万、ローン残額500万ならば
財産分与のの対象は2000万−500万=1500万となるので
その半額の750万を自宅を出ていく方へ支払うことになります。

自宅に住み続ける場合で問題になるのは
どちらが残ローンを払い続けるかという事です。

通常は、自宅に住み続ける人が残ローンを支払い続けるとする方が
簡単で合理的です。

この場合、自宅に住み続ける方は、財産分与の支払いをした上に
ローンの支払いを続けることになるので、損をしているようにも
思えますが、自宅の所有権を取得することになるので損はしていないと
するのが法律の考え方です。

実際、自宅に住み続ける人とローンの支払い義務者が異なるような形は
極力避けるべきです。

なぜなら、ローンの支払義務者が何らかの事情により
(例えば支払い義務者が破産するなど)
ローンの支払いを滞らせると、その期間や金額によっては
銀行が自宅を差し押さえたりするなどにより、結果的に自宅を
失う可能性があるからです。

 

自宅を売却する場合(オーバーローン)

オーバーローンの場合でも自宅を売却するか住み続けるかの
2択になりますが、どちらの場合にしても借金が残ることになります。
その返済義務は離婚後も夫婦ともに、もしくはどちらかが
背負うことになるため、離婚協議か長期化する傾向にあります。

オーバーローン付きの自宅を売却するのは予想以上に難しいのが現状です。
通常、自宅には抵当権が設定されており
売却に際しこの抵当権の解除手続きが必要になることが多く
売却額を低く抑えらえる傾向にあるからです。

また自宅を売却できても、当然ローンの支払い義務だけが残るため
この義務を夫婦共に又はどちらが引き受けるかが問題となります。

ローンの支払い義務者の関しては法律には規定はないため
財産分与の規定通りに夫婦で1/2の割合で負担しても
あるいは他の任意の割合で負担しても問題ありません。

しかし、忘れてはならないのは銀行の存在です。
銀行にとっては最初のローン契約が原則であり、
離婚等の事情変更はその契約に何の影響も与えません。
そのためローンの支払い義務者や負担割合の変更は銀行に対しては
何の効力もありません。。

つまり離婚をしても、銀行に対しては夫婦それぞれがローンの全額支払い義務を
負っていることに変わりは無いということです。
よって、財産分与で支払い義務者をどちらか一方に決めたり負担割合を変更しても
銀行がその変更を認めない限りは、他方も全額支払いの義務を負い続けることになります。

そのため、夫婦でローンの支払い負担割合を決める際には
現実に支払いが可能かどうか考え、他方に予定外の請求が行かないようにすべきでしょう。
また、可能ならば銀行を交えてローンの負担額の割合変更を認めてもらえるように、
あるいは借り換えを積極的に検討すべきです。

 

自宅に住み続ける場合(オーバーローン)

オーバーローンの状態にある自宅に住み続ける場合、
誰が残ローンを払い続けるのか、払える資力があるのかが問題となります。

通常は、自宅に住み続ける方がローンを払い続けるのが合理的です。
この場合、住み続ける方がローンの残額すべてをを引き受ける方が良いでしょう。
形としては、自分で買った家に自分でローンを組んで支払い続けるというものです。

自宅を出ていく方は、連帯保証人や連帯債務者の地位の解除を
銀行と交渉する必要があります。
そうしないと自宅に住み続ける方が、ローンの支払いを滞らせた場合
連帯債務者として銀行からローンの返済を迫られます。

これらの地位の解除は銀行の規定に従いますが、自宅に住み続ける方の
資力に問題が無いなら比較的認められやすいですが
資力に問題がある場合は親族を代わりの連帯債務者にたてたりすることがみられます。

稀にですが自宅に住み続ける方と、ローンの支払い義務者が異なる場合があります。
この場合の問題点は、ローンの支払い義務者が約束通りにローンの支払いを
続けるかどうかです。

通常、自宅を出ていく方にとっては、自身の住んでいない家への関心は無く
ローンの支払いを損や面倒と感じることが多いため
たとえ約束があってもローンの支払いを止めてしまうことが多々あります。
またローンの支払いを続けられない資力の変更があったりもします。
特に破産した場合は破産当事者はローンの支払い義務も免除されます。

そうなると、自宅に住み続ける方は、ローンの支払いをしなくてはならず
もしローンが支払えなければ、銀行による差押えを経て自宅を売却せざるを得ない
状況におちいり、自宅を失う上に借金だけが残る場合もあります。

そうならないためにも、自宅に住み続ける方とローン支払い義務者が異なる
財産分与は極力避けるべきでしょう。
もしどうしてもこの方法を選択する場合は、支払い義務者の資力の確認と
もしもの際のために自身の資力の確保を心掛ける方が良いでしょう。

 

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